今日も空が広い

アメリカの片田舎から思いつくままに…

「落下の解剖学」を見て夫婦について考える

こちらの映画を最近見て夫婦についてつらつら考えています。

Anatomy of a Fall

人里離れた雪山の山荘で、少年が血を流して倒れていた父親を発見し、悲鳴を聞いた母親が救助を要請するが、父親はすでに息絶えていた。当初は転落死と思われたが、その死には不審な点も多く、妻であるベストセラー作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられていく。事件の真相が明らかになっていくなかで、仲むつまじいと思われていた家族像とは裏腹の、夫婦のあいだに隠された秘密や嘘が露わになっていく。

https://eiga.com/movie/99295/

 

本当夫婦の関係って外からみてもさっぱりわからないですよね。

人間関係の中でも一番複雑な人間関係かも。

FacebookTwitterなどでは仲良いところばかりを載せていたのに突然離婚だったり。

逆に愚痴ばっかり載せていたのにどこか深いところで信頼関係があったり。

 

外からは本当にわからない。

っていうか中にいるはずの子供だって夫婦の複雑な関係はなかなか知りえない。

 

でも当然かもしれません。人間の心理は本当に複雑だから。

愛しているのに憎い。憎いのに愛している。

一緒にいるのが耐え難いのに、いないと生きていけない。

 

だからこそドラマになる。

 

>>>ここからネタバレが含まれます。<<<<

 

私がとても面白いなと思ったシーンは、夫のカウンセラーが証言台に立って彼の心理状況を話すのですが、それが妻のサンドラの認識と全然違い、お互い激しい言い合いになるところです。カウンセラーは薬をやめて回復に向かっていたといい、サンドラは彼がカウンセラーを全然信用していなくてすでに一度自殺未遂を起こしていたという。

お互い彼はこう言っていたと言い合うのですがそれが180度違う。

 

そう、これも人間。どちらもその時々では彼は正直に答えていたかもしれない。また少し飾っていたかもしれない。でも人の実態なんてそんな簡単につかめない。

 

人は一貫性のある言葉、行動を期待し、また一般的にそうすることを努めるけれどもやはり常にそうすることは難しいし(特に精神状態がよくないとさらに難しい)、共にする時間が長いとどうしてもぼろがでますよね。だから夫婦関係は難しい。

 

その後こっそり録音されていた前日の夫婦げんかの様子が裁判所で証拠として提出され披露されます。(作家としてネタのためとは言え夫婦の喧嘩をこっそり録音ってどういう精神状況よ!って思いますけど...)

 

ここでひたすら夫は妻を責めます。自分はもっと自由な時間があれば本が書けるのに。君が外へ出かけてばかりだから自分の時間が持てない。でもお金のためにはやりたくない教師としても働かないといけない。本が書けないのはお前のせいだと執拗に責める。

 

(ここらへんで一緒に見ていた私の夫が妻側の肩をもち、ちょっと彼をひっぱたきたい、と言っていて、私はついちょっとにんまりとしてしまいました。)

 

そして最初は冷静に応じていた妻もどんどん応戦。ロンドンからこちらの田舎へ引っ越すという選択をしたのはあなたじゃない。ホームスクールを決断したのはあなたじゃない。Self pityもいいかげんにして。

 

しまいには取っ組み合いのけんか。。。

あああ~ 涙

 

妻の言うことは全くの正論だ。

本当にそう思う。夫の言い分は言いがかりとしか思えない。

 

でも。

それでも。

もうちょっと優しくてもいいんじゃないかな。。。

 

夫は作家で夢中になって物書きをしていたせいで不幸なことに大事な息子が事故にあって視覚障害を負ってしまった。そのため物書きに集中することができなくなってしまった。

それと同時にその時書いていたテーマを使った形で妻が小説を書いて成功してしまった。

 

夫としては、もちろん妻が書くことを許可していたとしてもそりゃあつらいよね。。。書きたいのに書けない。苦しいのはわかる。

もう少し彼の苦しさに寄り添うことはできるんじゃないのかな。

お互い優しさがたりない。。。

 

本当夫婦の関係って難しい。

特に子供の事故みたいな大きな不幸があったりすると。

まずは自分を責める。そして耐え切れず相手を責める。

袋小路だ。

お互い傷ついてる。

 

お互い優しさを保つためにはどうしたらいいのかな。

そんなこといつも考えています。

 

最後にちょっと思ったこと。

こちらの映画、フランスの殺人罪に問われた際の裁判所の様子が描かれているんですが、アメリカの裁判映画と結構違ってびっくりしました。本当に現実もこんな感じなんでしょうか。

 

死亡する前日に録音された喧嘩のテープが出てきたことで、これで確実に殺人認定な雰囲気みたいになるんですが、えええええ、本当に???って思ってしまった。証拠ともいえない、こんな情報で本当殺人の罪にとわれるの?

アメリカだと犯罪を起こしたという beyond a reasonable doubt (合理的な疑いを超えて)な証拠が必要で、こんなケンカテープじゃ無理でしょ、と思ってしまいました。こんな喧嘩あらゆる夫婦で行われているし、そのあと仲直りセックスをしてちゃんちゃん、っていう夫婦だってあるわけで。こんな断片的に会話を切り取って殺人があったかどうかなんてわかるはずがない。

 

それだけ夫婦の関係を客観的にとらえるって難しい。

(それを思うと今法整備が進められている共同親権、本当に心配です。)

 

 

ほんといろいろ考えさせてもらいました。

ぜひ夫婦で見てもらいたい映画です!