今日も空が広い

アメリカの片田舎から思いつくままに…

アメリカでの働き方

前回ちょっとアメリカにおける働き方について言及したのでもう少しこれを掘り下げてみたいと思う。

注:この記事に限らずですが、あくまでも私の今のポジションから見えるアメリカであって、アメリカの働き方すべてを網羅するものではありません。(そもそもアメリカは本当にふり幅が広いので、何事においても網羅する、なんてことは無理なような。。。)

それなりの規模(従業員千人以上)の米系企業に勤めるヒラサラリーマン、という前提で、そこから見えるものを書いています。


前回、完全に子育ての責任をシェアしている夫婦が増えているという話を書いたけれども、当然ながらみなそんなフレキシブルな仕事ができるわけではない。


先週、私が所属するアメリカの地方都市オフィスに本社からちょっと偉い人がやって来た。
その人が言っていた。去年は国内にある約50支社をすべて回る目標を立てていたけど40くらいしかいけなかった、と。


アメリカはとくにかく広いので、陸続きの48州だけでもはじからはじまでは、8時間くらい飛行機に乗らないといけない。日帰りでいけるところはかなり少ない。他にも海外出張などもあると思うから、この人はたぶん1年の半分以上は出張なんだろうなあ。


当然こういう人は、子育てをシェアできない。見た感じ、40代後半という感じなので、子供がいればおそらくティーネージャーくらいかな。稼ぎもものすごくいいと思うし、奥さんは専業主婦である可能性は高い。もし奥さんがバリバリ働くタイプだったら、きっと家にNannyさん(家事や子育てをやってくれる人)を雇ってると思う。(そういう家庭も2件くらい知ってる。)

ちなみにオバマ大統領の奥様、ミシェルさんもオバマ氏が大統領選に挑むというタイミング(2007年かな?)から彼女のキャリアは一旦中断している。そもそも彼女は弁護士事務所でオバマ氏の指導役だったわけですけれども。またホワイトハウスに移った際は、ミシェルさんは彼女の実母という、子育てのサポートもつれてきている。

フレキシブルな勤務体系、とか、子育てのシェアだとか言ってられない仕事もたくさんある。アメリカにおいては、ポジションがあがればおあがるほど、通常出張は増えるし、勤務時間は長くなる。女性でも男性でも。

でもあまり上司が、「自分はこんなに働いているのに、どうして部下はもっと働かないのか。」「なぜワーキングマザーはもっと勤務時間を長くできないのか」というような愚痴はあまり聞かない。そもそもアメリカは、ボスが人事権を持っているので、結構自由に部下をクビにできるけど、部下は争って長時間勤務して上司にアピール!みたいな現象はおきない。



どうしてか。


いくつか理由を考えてみました。

理由1
法律を遵守しなければすぐ訴訟になる。

とにかく訴訟社会です。

きちんと残業代を払わない、とか、男女で昇進やお給料の差があれば、すぐ訴訟になります。
組織的にやっていたらすぐ集団訴訟で、大企業だったら多額の損害額を支払うことになるでしょう。
(州によって厳しさが違いますが。)

例えばいくつか性差別(gender discrimination)による訴訟をこの10年くらいで並べてみると:

Boeing- $72M
Morgan Stanley- $54M
United Airlines -$36.5M
New York City- $128.7MM
… and the list goes on and on

時間通りの賃金が支払われない訴訟も増えていて、こちらはWage & Hour Settlementsと呼ばれいるので検索すれば、いろいろでてきます。
(例えばパソコンを立ちあげると、Clock Inするシステムをもっているコールセンターがパソコン立ち上げとシャットダウンの時間分の給与が支払われていなかったという訴訟がおきたり。かなり厳しいです。)


理由2
努力<成果

アメリカは成果主義とはよく言われるけれど、アメリカの会社に勤めると、本当にそう思う。


例えば営業マンは常にどれくらいの売り上げを上げられたかで見られるので、それがコネとかゴルフ三昧の結果だとしても問題はない。逆にどんなに一生懸命やっていたとしても、大きな契約を落としてしまえば(それが全く自分に非がなく、例えば取引先が買収されたことによって失った契約だとしても)その人のポジションは厳しくなる。

だから上司も、長時間勤務を評価する、ということはない。
結果しか見ない。

逆にマネージャーが考えているのは、いかに作業効率をよくするかで、常により少ない時間&従業員(or コスト)で仕事をこなす仕組みを考えている。(だから仕事は次々とアウトソーシングされてます。。。)


理由3
アメリカ人は我慢してないから?


日本では、
みんな我慢している。
& より我慢しているほうがえらい。
    みたいな我慢社会だから? 


(一番自信がない仮説ですが。。。)


だから、

私はこんなに遅くまでがんばってるのに、子供がいるからって5時で帰って!、、、とか

私が若いころは上司が帰るまでは絶対に帰らせてもらえなかったのに、若いモンは!、、、とか

自分だってこんな報告書は無駄だと思うけど、上から言われたらやるしかないんだ!、、、とか

言いたくなる。
さらには、社会問題にも。

こんなに混んでる中毎日通勤だけだってきついのに、ベビーカーまで乗ってくるなんて!、、、とか

静かに本が読みたいのに、子供がうるさい!、、、とか

私ばっかり子育てして、全然手伝ってくれない!、、、とか

こんな知識将来全く無駄になるって分かってるくせに、受験勉強させる!、、、とか


東京はどうしてもストレス度が高い。
みんな本当によく我慢している。
だから自分より我慢していないように見える人に攻撃的になる。


アメリカは、、、、あまり我慢しないんですよね。
残業代が払われなければ訴訟を起こすし、残業が多すぎれば転職するし、無駄だと思う仕事は、とにかく上司に交渉する。通勤時間が長ければ、家で仕事することを交渉したり、時間をずらしたりする。

もし出張だらけで家族との時間がもてないことが一番問題であれば、お給料が下がったとしてもステップダウンか、転職しかない。
もちろん、何かを犠牲にしなくてはいけないケースは多い。
どんな選択でもトレードオフがある。
でもそれは自分で選んだこと。
結婚もそう。

もちろん、アメリカ人だってみんなそれぞれ愚痴はあるんですけどね。お酒とかのみにいくと。
上司、やってられねー!みたいなね。(笑)
でも我慢レベルは日本人に比べたらよっぽど低いと思う。

いや、違うな、そもそも我慢してるように見えるのは格好悪い、と考えているようにみえる。〔ヤセ我慢かも知れないけどね。苦笑)

文化の違いなので、一概に善い悪いは言えないけど、
我慢してる人にさらに我慢することを強いるのではなく、
少しでも我慢が少なくなる社会ができたらいいよね。